症状・治療について
クエスチョンカード
[2023.11.10] 患者さまの声(3)


まんたに先生へ


いつもありがとうございます。感謝の気持ちを伝えたくてお手紙を書いています。

初めての心療内科で、最初通うのは勇気が要りましたが、今では本当にあの時勇気を出してよかったと思えています。良い先生に出会えたこと、自分自身が前よりもグッと強くなったことが今の生活を大きく変えてくれたと思っています。

今考えるとゾッとするのですが、あの時の自分は死ぬことばかり考えて周りが真っ暗で何も見えてなくて本当に一歩間違っていたら自分を殺めていたかもしれません。なので、先生は私一人だけを救ってくれたのではなく、2人の子供、そちて旦那をも救ってくれました。この病院を選んで先生に出会えてよかったです。ありがとうございます。

まだ怖さとか緊張感とかっていうのは(朝方特に)ある時がありますが、そんな時も自分と向き合って会話して落ち着くようにしています。以前よりも朝希望をもって起きることが増えました。また、今の世の中いろいろ本当に大変で、皆それぞれの悩みを抱えながらそれぞれのステージで頑張って生きているんだということも解りました。塞ぎ込んでいたあの時の自分だったら解らなかったことだと思います。

もっと色々な事を知り、人間的に成長して生きてゆきたいと思います。先生には感謝の気持ちしかなく、これからもきっと今でも救われている方多いと思いますが、沢山の方を助けていかれるんだなと思います。どうかお体ご自愛ください。応援しています。ありがとうございました。

(30代女性)
[2018.06.13] お勧め書籍:『SLEEP』new


広島でのご講演を拝聴したことがある、分子栄養学に詳しい吉富信長先生が、Facebook上で推薦しておられたので読んでみました。


食生活の見直しと運動だけではまだ足りない。
そこに良質な睡眠が加わって初めて健康は成立する。

睡眠を時間の無駄と感じている人もいるだろう。
だが、十分な睡眠をとらない日々が続けば、
いずれ必ずそのツケを払わされるときがやってくる。


著者であり、多数のクライントに健康になるためのアドバイスを提供しいるショーン・スティーブンソンは将来を有望視されたフットボールと陸上競技の選手だったそうですが、医師から治療は不可能と言われた退行性骨疾患による腰痛のため競技人生を断念し、2年間投薬と安静で療養したけど一向に良くならず、このままではいけないと、栄養、睡眠、運動などの生活習慣について独学で研究して自らの病を克服したそうです。著者が習得した睡眠に関するノウハウをクライアントに伝えると劇的に健康になる方が続出したことが、本書を書くきっかけになったとのことでした。

「寝ている時間がもったいない」「あまり寝なくても大丈夫」といった考え方は捨て、老廃物が除去され、壊れた筋肉組織が修復され、免疫力が向上する睡眠を1日の中で最も重要な時間と認識し、睡眠のゴールデンタイムといわれる午後10時~午前2時に必ず良質の睡眠をとることが重要であるとのことでした。

スマホ、TVなどの電子機器はできるだけベッドルームから遠ざけておくこと、飲酒、カフェインは睡眠の質と量を低下させること、腸内環境を整えること、なども睡眠のコツも沢山述べています。

~熟眠したいなら運動するしかない~のチャプターでは、運動直後には炎症反応やストレスホルモンが上昇するが、その後の睡眠によって成長ホルモンなどの分泌が盛んになり脳も体も劇的に修復されていくことにより、気分も前向きになり意欲も向上していくとのことです。


そして一流のアスリートは皆8~10時間の睡眠を取っていることも紹介し、十分な睡眠を取らないと運動しても返って体調を崩すことになると説明しており、またどうせ運動するなら午前中が望ましく、有酸素運動より週2回以上のウエイトトレーニングのほうが気分を向上させ、深くて良質の睡眠を得やすい、などエビデンスを交えてわかりやすく説明してありました。

その他ここでは紹介しきれませんが、後半では睡眠に効果的な姿勢、パジャマ、サプリ、マッサージ、アーシングなど睡眠のコツが沢山紹介されていました。


当院の患者さんにも、些細なことでイライラする、パニック発作を起こしやすい、身体がだるく意欲がでない、など、精神症状と思っていたら、意外と睡眠に問題があったという患者様も多くおられます。薬物療法だけではなかなか改善しない方にも参考になるのではと思い、紹介させて頂きました。詳しくは院長、スタッフへお尋ねください。


Sleep_544x800 「SLEEP」(ショーン・スティーブンソン著・ダイヤモンド社)
[2017.08.09] お勧め書籍:『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』new

2017年に私が読んだ本のベスト3に間違いなく入ると思われる、「うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった」(藤川徳美著・光文社新書)をご紹介します。



「あなたの不調は鉄・蛋白不足の症状かもしれない」


広島県廿日市市で心療内科クリニックを開業しておられる藤川先生によると、諸外国と比べて日本人の鉄不足は深刻であると同時に、鉄不足への認識が甘いため、多くの人が自分の鉄欠乏に気づいていない、とのことです。著者は患者さんの症状や血液データを詳細に検討しながら、「高タンパク・低糖質食+鉄剤」療法を行ったところ、劇的に症状が改善し、向精神薬を減量・中止でき、完治する多くの患者さんがおられたとのことです。


ではなぜ鉄不足を解消すると元気になるのでしょうか? 人間はミトコンドリアという細胞内小器官で電子伝達系によってATPと呼ばれるエネルギーを作っています。ATPが減ってくるといろいろな病気になり、ATPがなくなるとそれは死を意味します。鉄はミトコンドリアでATPを作る際必須の補因子なので、鉄不足ではエネルギーが作れないのです。また糖質を取りすぎていると、効率のよい電子伝達系を使わず、解糖系という高率の悪いATP産生方法を選択してしまうので、糖質は摂っても摂ってもエネルギーが足りない状態が続いてしまいます。


またタンパク質は体の材料そのものであり貯蔵ができないため、常に十分摂取しておかないと何らかの病気になっていきます。また脳そのものや神経伝達物質の原料でもありますので、タンパク不足は精神疾患の原因となります。


藤川先生より「高タンパク・低糖質食+鉄剤」療法の勉強会を行って頂いたりして、当院でもこれまで試行錯誤で栄養療法も行ってまいりました。当院でも女性患者さんにはほぼ全例フェリチンなど詳しい鉄欠乏性貧血や栄養状態に関する検査も行っており、鉄剤の投与で症状が改善し、お薬も減量、中止できる方が多くおられます。「動悸や息苦しさ、体のだるさがなくなった」「朝の目覚めがよくなった」「家事や仕事が億劫でなくなった」などおっしゃいます。


このような立派な本にまとめて頂いたことにより、食事においてタンパク質を十分とる・糖質を控える、良質の脂肪を取り、トランス脂肪酸を避ける、鉄分の多い、レバー・赤みの肉魚をしっかり摂ることなどなど、お薬を使う前にするべき重要なことを引き続き患者さんへお伝えしていこうと決意をあらたにすることができました。


藤川先生には以前同じ職場で働いていたころ、私が学術論文を執筆する際、「主観や憶測を一切入れず、事実に基づいて流れるような論理的に読みやすい文章を書くこと」とご指導頂きましたが、この本も同様に筆者の臨床体験や生化学的にすでに明らかにされている事実のみで構成されており、一般の啓発本のレベルではなく、学術論文レベルの一冊と言えます。一般の方は勿論、是非医師や精神科・心療内科専門医にも幅広く読んでほしいと感じました。


うつ病やパニック障害などの症状がなかなか改善しない方、お薬をやめると再発してしまう方にも参考になるのではと思い、紹介させて頂きました。来院時に是非手に取ってご覧ください。次回受診日をお楽しみに(^^)/


Fe_Fujikawa
「うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった」(藤川徳美著・光文社新書)
[2016.10.30] お勧め書籍:『エクサスケールの衝撃』new

2016年に私が読んだ本のベスト3のうちの一冊が齋藤元章「エクサスケールの衝撃」(PHP)でした。そう遠くない未来の世界について具体的に描かれていて、まさに衝撃を受けました。



我々日本人こそが次世代スーパーコンピュータを開発し新世界を創出しなくてはならない
斎藤元章(PEZY Computing CEO


コンピュータの演算速度の単位として、キロ(Kilo;)、メガ(Mega)、ギガ(Giga)、テラ(Tera)あたりまではよく耳にしますが、その上には、ペタ(Peta)、エクサ(Exa)、ゼッタ(Zetta)、ヨッタ(Yotta)という単位があるそうで、日本が開発した「京」スーパーコンピュータはペタのレベルです。2020年ごろエクサのレベル、すなわち現在の「京」スーパーコンピュータの1000倍の速度のスーパーコンピュータが実現し、2030年ごろには人間の知能レベルを超える、いわゆる「人工知能」レベルに達する次世代スーパーコンピュータが完成すると、我々の生活が一変することになります。その頃には一般の個人が使用する自宅のパソコンやスマホが「京」スーパーコンピュータレベルに達しているそうです。


エクサスケール・コンピューティングが実現し始めると、これまで解析するのに数年~数十年かかっていたものが数分程度で解析できるようになるため、現在問題となっている、エネルギー問題、食糧問題、労働問題、人口問題、金融不安、などが解決していき、犯罪すら起こりえない、すべての個人があらゆる可能性を追求できる新しい社会が生まれていきます。ドラえもんの世界だけのものと思っていた、「どこでもドア」もできちゃうそうで、楽しみですね。


著者は新潟大学医学部卒の放射線科医師でもあるため、医療に関しても詳しく説明されています。人体内の個人における、遺伝子レベル、蛋白質レベル、代謝レベルでの病気が瞬時にわかるようになるため、病気や老化の問題が解決していきます。現在研究が進んでいるiPS細胞やナノテクノロジーを利用して、すべての臓器が置換可能になり、将来的には人体とコンピュータが融合していくことになるそうです。


ひとたび人工知能が完成すると、その人工知能がさらに高度な人工知能を開発していくため、最初に人工知能のレベルの次世代スーパーコンピュータを完成した国が永遠に世界をリードしていくことになります。よって、人工知能をいかに平和利用するかが重要であり、それを軍事利用しない、道徳心の強い平和的な民主主義国家がリードしていくことが重要であり、斎藤氏が急いで開発している理由だと述べています。


600ページ程度の本でここではほんの一部しかご紹介できませんが、文章も大変読みやすく、あっという間に読み終えてしまいました。明るい未来を想像すると気分も前向きになってきますね。皆さんも来院時に是非手に取ってご覧ください。次回受診日をお楽しみに(^^)/


 Exa_scale 「エクサスケールの衝撃」(齋藤元章著・PHP)
[2015.11.18] お勧め書籍:『マンガでわかりやすいうつ病の認知行動療法』

当ホームページでも再三ご紹介しています大野裕先生と漫画家今谷鉄柱さんが書かれた「マンガでわかりやすいうつ病の認知行動療法 こころの力を活用する7つのステップ」を待ち合いに置かせて頂きました。


「認知行動療法はこころの知恵のエッセンス。さあ、この本で認知行動療法の「基本型」を身につけて、ストレスを上手に活用しながら、自分らしく生きる助けにしてください。」
精神科医 大野裕


認知行動療法うつ病に対する非薬物療法としてエビデンスのある治療法ではありますが、決してうつ病の方だけでなく、「最近何をやってもうまくいかない…」「この仕事、私には向いてないんじゃないかな…」など、なんとなくストレスを抱えながら過ごしている方にも大変有効なツールであると思います。その点では、この本の主人公であるCA4年目の道端ひかりが職場や友人関係で悩み、認知行動療法の手法を使って乗り越えていく様子をマンガで見ることによって、より認知行動療法を身近に感じることができると思います。

大野裕先生の「『うつ』を生かす」「こころが晴れるノート」なども大変わかりやすく認知行動療法を解説してあり、当院でも患者さまにお勧めしてきましたが、「マンガでわかりやすいうつ病の認知行動療法」は7つのステップごとにストーリーが展開され、マンガだけ読んでもなんとなく認知行動療法ってこんなものかなあ、とわかります。さらに各ステップの大野先生による解説では、何が問題なのか、心の基本形やストレス対処法の基本形、行動活性化、認知再構成(コラム法)、問題解決技法、コミュニケーションツール、などなど本格的な教科書に引けを取らない専門的な内容が満載されていました。

大野先生に直接ご指導頂いた際も強調しておられましたが、「前向きに考える」ことが大切なのではなく、「前向きも後ろ向きも様々な考え」ができることが大切で、状況に応じて「しなやかな考え方」ができるようになることが重要である、とこの本にも書かれていました。この本を読んで、日常や職場での問題にしなやかに対応できるようになって頂ければと思います。

来院時に是非手に取ってご覧ください。次回受診日をお楽しみに(^^)/


Manga_CBTアマゾン 「マンガでわかりやすいうつ病の認知行動療法」(きずな出版)
[2015.7.13] お勧め書籍:『教師の心が折れるとき』

学校教員に特化したメンタルヘルスを専門にしておられる臨床心理士の方が書かれた「教師の心が折れるとき」(井上麻紀著・大月書店)を待ち合いに置かせて頂きました。


「代わりの先生はいるよ。でも、あなたの代わりはいない。

だから、仕事と心中するな!」


著者の井上心理士は公立学校共済組合近畿中央病院メンタルヘルスケア・センター副センター長として、「教師である前に、人として元気になってもらうこと」をモット-に、これまで400名以上の教員に職場復帰支援を実施し、復帰率は80%近くにのぼるそうです。よって、「1. メンタルヘルスケアの現場から見える教員たち」では、心が折れた教員たちの姿が具体的に描かれています。40代後半の、仕事をバリバリこなし、人間関係の調整も上手な女性教員は、小学6年生の担任・学年主任を任されて、帰宅は夜10時、11時が当たり前、家族のご飯を作って仮眠を取って、午前3時に起きないと仕事が回らない。土日もどちらか1日フル出勤。そんな生活が数年間続き、「できる」先生でいなければ、という思いから、無理に体を起こしていたところへ、決定打として、対応が難しい保護者とのトラブルが起こり、ついに動悸が止まらず起き上がれなくなり、何も決められない、涙が止まらない状態となり休職に至った例が描かれています。


「仕事していないと満足できない」、「無理でもがんばればなんとかなる!」という理想の働き方が20代で止まっていて、「年とった自分を受け入れ」られず、40代、50代になって気力、体力がついてこなくなる先生が多く、放課後の生徒指導や部活動の指導など、本来「サービス」でやっている業務にも関わらず、やってくれて当たり前で、ケガや事故があると責任を問われ、生徒・保護者・同僚・管理職からも感謝されず、ただただ疲労し消耗していくことも多いようです。


学校には「気持ちを出し合わない文化」があるそうで、校長、教頭以外は横並びで指揮命令系統がなく、年齢や経験に関わりなく同じ質や量の仕事を期待されることも、教員のストレスが高い一因であり、若い教師が配属された現場で理想とのギャップに愕然として休職に至るケースも多いと指摘しています。「3. 効果的な対処とは?-いろいろな事例から考える」で典型的な6つのケースが具体的に描かれています。


「2. 教員へのメンタルヘルスケアの実際」では、段階的なサポート、管理職向け研修、プレ・リワーク、職場復帰トレーニング、慣らし出勤、復帰直後のフォローアップ、メンタルヘルスアドバイザーなど、同センターでの取り組みが具体的に描かれており、これだけ専門的で手厚いサポートがあれば、前述したような過酷な現場にいる教員たちも安心して働けそうだと感じます。


「4. メンタルヘルスを維持するために-予防から受診の判断まで」では、ストレスサインを見逃さないように、とストレスチェックシートや受診の目安が書かれています。不調を訴える職員への対処法もためになる内容だと思います。


「5. ダウンしてしまったら-治療、職場復帰、再発防止」では、それぞれの段階で、本人、家族、管理職が注意する点が詳しく書かれています。最後に付録として「保護者対応のポイント」が載せてあります。近年保護者からの「行き過ぎた苦情」が増えており、「話せばわかる」人ばかりではないと認識することも必要であるとのことでした。教員も心理士並の「話を聞くスキル」が要求される、大変な時代なんだと感じました。


近年、教員の方が当院を受診されるケースも多く、私自身も学校現場の問題点を多少は理解しているつもりでしたが、この本を読んでまだまだ不十分だったと実感しました。広島市でも草津病院ワークネクスト広島職業能力開発促進センターでのリワークプログラムが充実していますが、井上心理士のように、学校教員を専門として復帰支援できる専門家も必要な時代なのだと考えさせられました。


現在学校現場で悩んでいる、あるいは休職中だったり復帰したけどまだ自信が取り戻せない教員の方、サポートしているご家族や管理職、同僚の先生方、保護者の方々、など様々な方に一読されることをお勧めします。


来院時に是非手に取ってご覧ください。次回受診日をお楽しみに(^^)/


kyoushi_amazon_551x800写真 「教師の心が折れるとき」(井上麻紀著・大月書店)
[2015.6.17] お勧め書籍:『薬に頼らない精神医学』

以前にもご紹介しました、「生活習慣病としてのうつ病」の著者でもある井原裕先生や、「アルコールとうつ・自殺」の著者である松本俊彦先生ら、「よくしゃべる精神科医の会」が編集した「くすりにたよらない精神医学」(井原裕・松本俊彦編)を待ち合いに置かせて頂きました。多方面の専門家が向精神薬に頼らない治療法やアプローチについて寄稿しています。


井原先生の巻頭のあいさつ文でも、「統合失調症やてんかんに対する長期薬物療法の意義を否定するものではない」と最初に断っておられますし、私も適応のある疾患の方には向精神薬を必要量処方しております。薬物療法を全く否定する本でないことを最初にお断りしておきます。


「くすりにたよっていた時代をふりかえる」では、長年向精神薬を常用していて、井原先生と一緒に減薬できた患者さんの経過がインタビュー形式で克明に記されています。14年間に渡る精神科治療歴を重ね、治療の前半は薬物療法が中心、後半は薬剤を漸減して精神療法と療養指導が中心でした。「行くたびにどんどんくすりが増えて」、「くすりが増えたすぐは眠れたりするけれども、慣れてくるというのか、だんだんきいてない感じで。くすりでこころの悩みが消えるはずもなく、それで、だんだんのまないときがあって、いざというときのためにためたりかんかするように。」「お酒も飲んでいたので、くすりを飲んでお酒を飲んで、眠くなって寝るみたいな。」など、当時の生活を振り返っておられます。「仕事が見つかって働き始めたり、何か夢中になれるものができたりしたので、よかったかなあと。」「最初、病気になったとっかかりが誰にでもあるような悩みじゃないですか。くすりを飲んだからといって、その悩みが消えるわけでもないし。」「だれでも生きていれば何かしら悩みがあって、挫折があるんですよね。簡単に飲み始めた向精神薬だったのに、そのために何十年も苦しい思いをするとは思わなかったですね。」、とおくすりから脱却していく過程が描かれています。


「ドラッグ・フリー・ライフのために」では、「日本うつ病学会のガイドラインは、軽症うつ病には薬物療法を推奨しておらず」「患者さんの多くも何らかのアドバイスを求めてやってきている」にも関わらず、「患者さんをドラッグ・ディペンデントにする精神科医は、悪意からではなく、むしろ善意からそうしている」のが現状であると述べています。「おくすりは、睡眠不足や不規則な生活を送っている人のこころを安定させるものではありません。くすりに効果を発揮させたければ、くすりを受け入れる体のコンディションをベストな状態にもっていかなければなりません。そのために、睡眠・覚醒リズムを安定させて、24時間周期で動く自律神経系をして最高の機能を発揮させなければなりません。」と述べています。そのためにも「せめて飲酒習慣ぐらいは聞いておかないといけません。せっかくのくすりもアルコールと一緒だと効果が減じてしまいます。」また飲酒は睡眠を妨げ、回復力を低下させますので、なおるうつ病も治らない、と述べておられます。


「ユーザーの願い・コメディカルの思い」では家族会や新聞記者、薬剤師、心理士から、「くすり漬け化する精神医学」では冨高辰一郎先生、松本俊彦先生ら著名な先生方から、「くすりにたよらない治療」では認知症やADHD、児童精神科、薬物依存症の専門家から、「他科から考える」ではプライマリーケア医、総合診療科医救急医療専門医らが様々な提言がなされています。


「薬をもう少し減らせないかと思って、、、」「薬飲んでると調子はいいけど、ぼーっとして仕事や家事がはかどらない」など悩んで当院を受診される方もおられ、私も日々薬物療法は最小限にしていきたいと考えております。この本を読んで、是非くすりに頼らず生活習慣から改善していこうと思って頂ければうれしいです。


来院時に是非手に取ってご覧ください。次回受診日をお楽しみに(^^)/

bKusuri_Tayoranai 「くすりにたよらない精神医学」(井原裕・松本俊彦編)
[2015.3.25] お勧め書籍:『統合失調症がやってきた』


「楽しい。感動的に楽しい。ぼくはここに戻ってきたかったんだ。
僕のいる場所はやっぱりここなんだ。」


お笑いコンビのハウス加賀谷さん、松本キックさんが書いた「統合失調症がやってきた」(松本ハウス著;イースト・プレス)を待ち合いに置かせて頂きました。

「社会の偏見は根深く、なかなかなくならない。だけど、ぼくは、偏見がなくなることを期待するより、自分がどう生きるかが大事だと考えてるんだ。」(あとがきより)


四六時中「かがちん、臭いよ」などの幻聴が続いたり、廊下が波打って迫ってくるなどの幻視や被害妄想に悩まされるけど、病気だとは気付かず悩む、など、統合失調症を発症した時の本人の不安な気持ちや自分を責める様子が詳しく描写されています。お笑い芸人として華々しく活躍していたようで、実は向精神薬の服用を自己調整をして苦しんでいたり、アパートが監視されている、ヒットマンに狙われているなどの注察妄想も活発だったようで、入院治療に入るまでも大変だっただろうと感じました。


向精神薬による効果と副作用も実体験をもとにわかりやすく書かれていて、自分にあった薬が見つかった時の体験描写も、治療中の方にもとても参考になるのではないかと思います。


統合失調症を克服し見事に社会復帰を果たしていく様子が描かれた、読みやすい本です。統合失調症の患者さまやご家族の皆様、あるいは単に統合失調症ってどんな病気か知りたいという方も、来院時に是非手に取ってご覧ください。(^^)/


Kagaya_amazon写真 「統合失調症がやってきた」(松本ハウス著;イーストプレス)
[2014.12.5] お勧め書籍:『アルコールとうつ・自殺』


「悩んでいる同僚がいたら、一緒に晩飯ではなくランチを!」


「よくしゃべる精神科医の会」の松本俊彦先生が一般の方向けに書かれた、「アルコールとうつ・自殺」(松本俊彦著;岩波ブックレット)を待ち合いに置かせて頂きました。当院へ通院しておられた、ある患者さまより教えて頂いた本です。


うつ病対策だけでは男性の自殺は防げない-。自殺予防対策に奔走してきた松本俊彦先生が、様々な調査や統計データ、診療経験をもとに、常用飲酒がうつ状態や睡眠障害、自殺への衝動をどのように助長するのかを詳しく解説しています。


松本先生らのグループが2009年に全国の自殺既遂者76例を調査したところ、2割以上にアルコール問題が見られたそうです。このアルコール問題とは、肝障害を指摘されても晩酌がやめられない、などよくある程度の方も多く含まれています。アルコール依存症がうつ病や自殺の原因とは皆さんもよくご存知だと思いますが、この調査で驚くべきことは、アルコールを普通に常用している程度でも十分うつ病発症・増悪、自殺率の上昇が認められる点です。


「うつ病治療中の飲酒は、たとえ正常範囲内の量・頻度であっても、うつ病を難治化させ、薬物療法の効果を減じ、自殺リスクを高める」ことが明らかになったそうです。「追い詰められた時に飲みながら物を考えるな!」「眠れない時は専門医に相談を!」「悩んでいる同僚がいたら、一緒に晩飯ではなくランチを」と提言しておられます。


その他、カナダ、チェコスロバキア、フランス、ハンガリー、スウェーデン、アメリカなど、海外の多くの国のデータでも飲酒率と自殺率がきれいに相関すること、ロシア、エストニアでかつて行われた反アルコールキャンペーンでも確実に自殺率が下がったことなどのエビデンスもわかりやすく解説されていて、納得しました。


アルコールという精神作用物質の薬理効果が自殺行動を誘発する可能性、すなわち、「死にたいと思っていたが、死ぬ勇気はなかった。でも、酔ったら恐怖感がなくなって…」といった事態を引き起きしうる可能性を示すものと考えられます。


当院ではアルコール依存症の治療を行っておらず、どうしても飲酒がやめられない方にはアルコール治療プログラムのある専門病院を紹介させて頂いています。


心療内科治療において飲酒がいかに悪影響を与えるかを改めて実感できました。当院でも開院当初から、アルコールと向精神薬の併用はできないこと、飲酒により良質の睡眠がとれず病気の改善が遅れること、などの理由から、通院治療中は原則、飲酒しないことを治療方針とし、患者さまにも約束して頂いた上で治療を開始しています。最初は驚かれる方もおられますが、ほぼ全員が「思い切ってお酒を断ってよかった」「朝の目覚めがよくなった」「活力、意欲が湧くようになった」とおっしゃいます。お酒をやめるだけでお薬による治療が必要なくなる方もおられ、今後もこの方針を継続していこうと思っています。


著者が一般向けに分かりやすく書いた、80ページ程度の薄くて読みやすい本です。来院時に是非手に取ってご覧ください。次回受診日をお楽しみに(^^)/
black_dog_Amazon写真 「アルコールとうつ・自殺」(松本俊彦著;岩波ブックレット)
[2014.10.19] お勧め記事:タバコはAIDSより危険!(UCSF)

The Examinerというアメリカで有名な新聞にタバコに関する大規模な調査の記事が載っていましたのでご紹介します。日本ではなかなかタバコに関するデータが記事になりませんので、アメリカのデータをお伝えできればと思いました。欧米では国策として禁煙政策を推進し、ある程度の成果があがっているようですが、まだまだタバコによる死亡者数は多いとのことです。


Study: Tabaco use toll drops in California, but smoking still more deadly than AIDS

cigarettes_SF_480x320
(In 2009, San Francisco spent $380 million on health care costs associated with smoking. The Examiner 2014/10/15)


研究:カリフォルニア州で喫煙者は減ってはいるが、タバコはAIDSより危険!(The Examinar新聞記事の和訳)


UCSF研究所がカリフォルニア州で調査したところ、タバコによる死亡者数、医療費ともにAIDSやアルツハイマー病より高いことが分かった。


この研究はカリフォルニア州立大学のタバコ関連疾患研究プログラムからの研究費で1979年に始まり10年ごとに発表され、今回が3回目となる。

研究責任者であるUCSFのWendy Max教授によると、カリフォルニア州における1999-2009年のたばこ税収はその前の10年間より減少していることがわかった。


また、1989年におけるタバコ関連疾患のコストは$7.6 billion、1999年では15.8 billion、2009年は$18.1 billion(約1.8兆円)であったが、22%インフレ率で換算すると2009年では1999年より減少している。


喫煙者数も10年前より減少しているが、カリフォルニア州では依然として400万人が喫煙している。


今回の調査から、喫煙者の60%はいつか禁煙しようと思ったり一日10本以下に減らそうと考えていることがわかった。また男性の喫煙率は17.2%、女性の喫煙率は10.1%で、それぞれにかかる医療費は$11.7 billion, $6.4 billionと男性が多い結果だった。Max教授によると「10年前に比べて喫煙率が下がり、一日の本数も減って」おり、禁煙政策の効果が現れていることがわかった。


一方、2009年カリフォルニア州でのタバコ関連死亡者数は34,363人。これはAIDSの17倍、糖尿病患者、インフルエンザ肺炎患者の5倍、アルツハイマー病、不慮の事故の3倍の死亡者数だった。


来週にもEric Mar評議員により喫煙許可所を減らす条例案が評議員会へ提出される予定。犯罪危険地域やチャイナタウンのような低所得者層の居住地には及んでいないが、これまでの取り組みで市街地での喫煙許可所は2011年の1,086か所から970か所に減少している。


サンフランシスコ市のすべての薬局でタバコ販売を全面禁止した条例も、2008年にすでに制定されている。


(The Examinar新聞 2014年10月15日記事の和訳)

cigarettes_SF_480x320 (The Examiner 2014/10/15)
[2014.9.3] お勧め書籍・動画;『ぼくのなかの黒い犬』


ニュージーランド出身の世界的なイラストレーターであるマシュー・ジョンストンという方が描いた絵本、『ぼくのなかの黒い犬』(原題”I Had a Black Dog”)を待ち合いに置かせて頂きましたので、ご紹介します。


眠れない、やる気がでない、と感じたら、
それはあなたの人生に黒い犬が入り込んでいるからかもしれません。


私も数えきれないほどのうつ病の患者さんにお会いしてきましたが、うつ病患者さんの見ている世界を完全に理解できているとは言えません。また患者さんのご家族やご友人の方々も、限りなく寄り添って支えてあげていても、患者さんと同じ世界で暮らしているわけではないのです。


そんなうつ病の世界を”黒犬”で表現した絵本が話題になり、インターネット上で動画も公開され、多くの患者さんから「驚くほど的確」との声が寄せられているそうです。

black_dog_YouTube写真

アマゾンのレビューでも

「うつ病の本で絵本というのは、はじめてではないでしょうか。そういった意味では、うつ病の私からいうと活字を読むのもつらい症状の方には是非読んで欲しいです」

「うつ病の人にとって一番の薬はうつ病を理解してくれる理解者が欲しいんです」

などが寄せられています。

うつ病を身近に感じたい、うつ病を家族や支援者にわかってほしい、あるいはうつ病に単に興味がある、という方など、来院時に是非手に取ってご覧ください。


Black Dog Amazon 「ぼくのなかの黒い犬 」(メディア総合研究所)
[2014.7.2] お勧め書籍;「発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉」


星野仁彦著「発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉あなたの職場にもいませんか?」(祥伝社新書)を待ち合いに置かせて頂きましたのでご紹介します。アマゾンでも”クリックなか見検索”がついてました。


「机がきたない」、「締切が守れない」、「人の話を聞かない」など、日頃から職場でちょっとしたトラブルが続いている人が意外と発達障害だったというケースも見られますが、当事者も周囲の人もこの一冊で最適な対応がわかる内容だと思います。


「発達障害」は最近よく耳にする病名ですが、具体的には不注意・多動性・衝動性などが特徴のADHD(注意欠陥・多動性障害)とアスペルガー症候群に代表される広汎性発達障害があります。この本で一環して述べられているのは、発達障害だからといって仕事ができないことはない、ということでした。


前半は発達障害についてわかりやすくまとめてあります。また、発達障害者が仕事をうまくこなすにはどうしたらよいのかを、22項目具体的に提示してあります。


星野先生ご自身もADHDであるとのことで、「星野式ADHD仕事術①~⑨」という、ご本人の実体験に基づいた工夫がところどころに挟んで書かれてあり、わかりやすい内容でした。また雇用者が発達障害者を雇う時にどのように彼らのよい面を生かしていけばよいのか、また他人と違うからできることについても、逆転の発想で発達障害であることをメリットと考えて社会適応してもらう方法も記されています。


後半は、発達障害の診断と治療はどのように行われているのか、また、うつ病、依存症などの2次的な合併症にはどのようなものがあるのかについて書かれており、発達障害であることから目を背けずにしっかりと向き合っていくことが大切だとのことです。


当院では発達障害の治療を専門に行っているわけではありませんが、職場での適応できない方などを診察する際に、このような視点も常に持ちながら診断していきたいと思います。また治療が必要な方は適切な医療機関をご紹介いたします。


次回受診時に待ち合いで手に取ってご覧ください m(__)m。

星野仁彦著「発達障害に気づかない大人たち」
星野仁彦著「発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉」(祥伝社新書)
[2014.2.26] お勧め書籍;「仕事休んでうつ地獄に行ってきた」


丸岡いずみ著「仕事休んでうつ地獄へ行ってきた」(主婦と生活社)を待ち合いに置かせて頂きましたので、ご紹介します。


フリーキャスター丸岡いずみさんがうつ病にかかり、夕方のニュース番組を降板されたのはご存知の方も多いと思いますが、うつ病を発症し、休職、入院・外来治療、そして結婚、社会復帰していく彼女の実体験が描かれています。


まず驚かされたのは、ニュースキャスターとして有能でタフな彼女でもうつ病にかかってしまったということです。正直に言うと、私はこの本を読むまでは、女性ニュースキャスターってカメラの前に座って原稿を読んでればいい、華やかなおいしい職業だなあ~、なんて思ていましたが、実際は過酷な現場へ赴いて精力的に取材をしたり、急いでスタジオに戻ってニュースを読んだり、夜は取材の打ち合わせや勉強したり、というハードな職業だったんですね。失礼いたしましたm(__)m。それを難なくこなしていた体育会系の彼女でも限界を超えてしまうとやはりうつ病になってしまう、つまり誰でもうつ病になりうるということがよくわかります。


うつ病は身近にいる家族や同僚にも気づかれないほどわかりにくいものだということもよく描かれています。彼女は家では一睡もできない、食べ物も喉を通らない、5分もじっとしていられないほどうつ病が悪化していた状態にも関わらず、カメラの前ではお茶の間へ笑顔でニュースを届けていたそうです。骨折などのような外見でわかりやすい病気ではないので、我慢強い、はたから見ると強そうに見えるひとほど悪化してしまうまで治療につながらず重症化してしまうというなのでしょう。またこれまでうつ病について取材してよく理解しているつもりだった彼女自身がうつ病に対してつよい偏見を持っていたことを実感したとも述べています。


過酷な闘病生活の記述もリアルで、ほとんど食べられない、全く眠れない、きれい花を見てもすぐに悪いほうに考えてしまう、父親のベルトを見ただけで死にたい気持ちが湧いてくる、母親に毒をもられているんではないかという妄想が消せない、でも自分がうつ病だと認めたくない、抗うつ剤は飲みたくない、など重症のうつ病患者に典型的な複雑な心情もよくわかりました。彼女が以前認知行動療法を取材した経験があったため、自己流でうつ病を治そうと試みたけどうまくいかなかったことも描かれており、彼女なりのうつ病に対する心得10か条も参考になる内容でした。


日本うつ病学会会長の野村総一郎先生による特別解説や諏訪中央病院名誉院長の鎌田實先生との対談もためになりました。うつ病でお悩みの方、またはご家族の方も是非読まれることをお勧めします。軽症のうちに治してしまおう、早めに周囲の人に打ち明けよう、と彼女も訴えています。


仕事休んでうつ地獄へ行ってきた
丸岡いずみ著「仕事休んでうつ地獄へ行ってきた」(主婦と生活社)
[2014.1.15] お勧め書籍;「生活習慣病としてのうつ病」


2013年に私が読んだ本のベスト3のうちの一冊が井原裕「生活習慣病としてのうつ病」(弘文堂)でした。エビデンスや著者の豊富な診療経験に裏打ちされた内容で、当院で行っている診療内容に近く、感銘を受けました。


まずは精神科医・心療内科医はしっかりとした精神療法を行うべきであるとし、薬を処方するだけ、患者さんの訴えに傾聴するだけではいけないと警告しています。


そして、外来ではまずは薬に頼らない治療を試みるべきであり、おろそかになりがちな精神療法を限られた時間の中でいかに効率よく行うかが書かれています。現在の医療制度での心療内科外来診療は「初診30分超、再診5分超」という限られた診察時間で治療せざるを得ない現実があり、「〇〇精神療法」などの時間がかかる治療はボランティアでない限り不可能です。しかし、そんな中でも生活習慣指導を中心に積極的に精神療法を行うべきだと述べています。


睡眠とうつ病グラフ

多忙で睡眠時間が十分取れなくても週半ばや週末に溜め寝をして週に合計50時間睡眠を取ることが重要であり、睡眠は副作用のない、もっとも安価な治療法であると述べています。また、飲酒は睡眠の質を低下させ、抗うつ薬の作用を低下させたり副作用が発現しやすくなるため、常用飲酒者には薬を処方すべきではない、まずは2週間飲酒を控えてもらい、それでもうつ状態が続いていれば抗うつ薬を開始するべきであるとしています。また、喫煙も睡眠の質を低下させ、向精神薬の血中濃度を下げるため禁煙すべきである、など生活習慣全般を見直すことにより、軽症のうつ病は改善させることができるとしています。


中等症~重症のうつ病治療ができる医師が、軽症うつ病もうまく治療できるわけではないとの提言も同感です。私も開業前は重症のうつ病治療を行い、ある程度の自負はありましたが、開業すると適応障害レベルの軽症うつ病の患者さんが多く、重症うつ病と同じように治療しても治せないことを実感し治療法を工夫してきた経験があります。


井原先生はエビデンスについても豊富な知識があり、また真の臨床家であると実感しました。うつ病でお悩みの方は是非お読みいただき、軽症のうちにうつ病を治していきましょう。また精神科、心療内科を学ばれている若い先生方や医療関係者の方にも広く読んで頂きたいと思います。


「先生はすぐ禁煙しろっていう・・・」「なんでお酒やめんと処方してくれんのですか。。。」など、患者さんから文句を言われながらも、開業以来、生活習慣の改善を指導してきたことは間違いではなかったと、この本を読んで感じることができました。これからも生活習慣指導は続けて行きたいと思っていますので、皆さま、ご理解ご協力の程、お願いいたします m(__)m。


当院待ち合いにも1冊置かせて頂きましたので、是非手に取ってお読みください。ご不明な場合はお気軽に受付スタッフへお尋ねください。


生活習慣病としてのうつ病 井原裕著「生活習慣病としてのうつ病」(弘文堂)
[2013.7.19] 不眠(うつ病)


眠れない、仕事や家事がてきぱきとできない、周囲との交流を避けるようになる、遅刻、早退、欠勤(欠席)が増える、好きなことに興味がなくなる、身だしなみに気をつけなくなる・・・このような様子が2週間以上続く場合は、もしかしたらそれはうつ病かもしれません。特に不眠はうつ病の初期に現れることの多い症状ですので、注意が必要です。


うつ病のメカニズムについては、精神活動を正常に活性化させる脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン等)のバランスが崩れることにより、脳の働きが低下することで発症するとの説が有力ですが、その他シナプス減少説や神経新生減少説なども原因と考えられています。


治療法としては休養、薬物療法、環境調整などがありますが、近年ではストレスをため込みやすいものの見方、考え方(認知)の癖を直すことで治療に結びつけていく「認知療法」も有効性が証明されてきました。認知療法とは否定的、悲観的な考えの根拠や結果について考え、知らず知らずのうちに偏った考え方をしていることに自ら気づいていただくことで、考え方に柔軟性を取り戻す治療法です。


うつ病は決して「弱さ」「怠け」からくるものではなく、「病気」であることを認識していただくことが大切です。また特別な病気ではなく、誰でもかかりうる病気です。気になる症状がある場合は早めに専門の医療機関(精神科、メンタルクリニック、心療内科)を受診されることをおすすめします。


うつ病は初期の軽症のうちに手当てすれば長引かせずに回復することができます。家族など周囲の方々は、心配しすぎない、失敗の原因を求めない、ゆっくり休ませるなどの点に気を配っていただくとよいでしょう。


当院では一般的なうつ病治療に加えて、先ほどご紹介した認知療法を簡易的に効率よく行ったり、うつ病に対する治験や臨床研究(SUN☺D)にも参加しています。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。


(西広島タイムス 2013.7.19掲載)


Lilly治験パンフレット(うつ病治験案内パンフレット)
[2013.5.7] 効果のない薬が承認されてしまわないように!


効果のない薬まで承認されてしまわないよう、Sense About Science, Bad Science, BMJ, James Lind Initiative, the Centre for Evidence-based Medicineやその他世界中の患者団体などが現在署名活動を行っており、当院も協力しています。


現在は、効果の認められた薬の治験や臨床研究結果だけが公表され、効果が認められなかったデータは公表しなくてよいことになっています。その弊害として本当は効果のない薬なのにたまたま有効性が認められた一部の結果だけで承認されてしまい、誤って世の中に出てしまう危険性があります。すべての結果を公表した上でよい薬かどうか判断するべきと考えています。


以下のサイトを読まれて賛同してくださった方は、[Sign the petition✎]ボタンをクリックして、お名前と、メルアドをご記入いただき投稿していただくと完了です(国と職業はオプションです。コメントもオプションです)。


ご協力よろしくお願いいたします。m(__)m


safe_imageAll Trials Registered | All Results Reported
[2013.2.21] 患者さまの声(2)


まんたに先生へ


いつも優しく話をきいてくださってありがとうございます。うつ病の治療をはじめて、一年がたちました。最初1年はかかると言われてビックリしましたけど、初めて来た頃よりずいぶん楽になってきました。(^^) 


うまくコトバにできませんが、とても支えになりました。まんたに先生で良かったです。(^^)


看護師さん方も、やわらかく接して下さって伺うとホッとします。治療もまだ続くと思いますし、成長してないかもしれませんが、引き続きよろしくお願いします。(30代女性)
[2012.12.10] 患者さまの声(1)


先生のお蔭で、耳鳴りが治まりつつあります。


3年前、耳鼻咽喉科で治療を受けていた時、外的要因が原因で翌朝から耳鳴りが始まりました。いろいろと対処されましたが、一向に良くならず、1年後には大学病院を紹介されました。


2年を経過しても改善されず、その間、胃部不快感、イライラ、集中力の欠如、頭痛、等、耳鳴りに起因すると思われるストレスに悩まされ続けました。気分の沈む状況では、周囲に与える影響もよくないことが多く、担当の先生に相談しても、諦めることを誘導されるように感じました。


3ケ月前、総合病院に勤務する友人から「萬谷先生に相談してみては」と聞き、先生を訪ねました。先生は、じっくりと私の話を聞かれ、対処していただきました。以後、継続的に診察していただくうちに、あれほど気になっていた耳鳴りが徐々に遠のき、最近は気分よく生活できる日が多くなりました。


これからも先生の診察を受け、以前のような積極性を取り戻したいと思っております。萬谷先生に感謝いたします。(70代男性)


[2012.11.12] 「あがり症」治療のすすめ


大勢の人から注目されたり、不慣れな場面に遭遇すると不安になったり緊張することはよくあることです。適度な不安や緊張感は集中力を高めミスを少なくしたり、相手に好印象を与えるなど、良い効果をもたらすことが多いものですが、「小さいころから人前で注目されるのが怖くて避けてきた」「緊張して食べられないので外食もできない」「プレゼンでは緊張して声が震えてしゃべれなくなる」など、いわゆる極度のあがり症になると生活や仕事に支障を来してしまう方もおられます。極度の緊張感のために能力が十分発揮できないもので、「根性が足りないからだ!」「鍛えれば徐々になくなる」などと言われて辛い思いをしておられます。


このような症状を社交不安障害(SAD)といい、ICD-10国際疾病分類の診断ガイドラインによると「比較的少人数の集団内で他の人々から注視される恐れを中核として、社交場面を回避し、赤面、手の震え、悪心や尿意頻回というような不安の二次的な症状を一時的な問題と確信していることが多く、そのために周囲の人たちから自分が低く評価されてしまうのではないかと恐怖、不安を抱き、パニック発作に発展したり、社会的孤立に至る」とあります。生涯有病率は12.1%、12か月有病率は6.8%と非常に高い有病率を示す一方で、専門医で治療を受けておられるのは5%以下と言われています。またうつ病やアルコール依存症を合併してしまうことが多いことも知られており、治療を受けずに放置しておくと更に社会適応が難しくなるケースが見られます。


欧米では1980年代にDSM-IIIという精神疾患の診断基準によって社交不安障害が認知され、お薬での治療やカウンセリングなどによる治療が開始されるようになりました。我が国でも古くから「対人恐怖」などの病名で精神療法を中心とした治療が行われてきましたが、2008年より正式に社交不安障害と呼ばれるようになり、SSRIなどのお薬による治療が始まり、効果があることが証明されてきています。2012年5月より海外では最も効果が高いと認められている新しいお薬による治験が日本でも開始され、広島県内では当院を含めて4つの心療内科で社交不安障害に対する治験を行っています。当院でもすでに数名の方が取り組んでおられ、症状が改善したと喜んで頂いています。社交不安障害でお悩みの方はお気軽に当院へご相談ください。


(西広島タイムス2012.11.9掲載)


SAD治験パンフレット(社交不安障害治験案内パンフレット)
[2012.8.20] SUN☺D協力のお願い


京都大学が中心となって行われているSUN☺D(サンディー;抗うつ薬の最適使用戦略を確立するための多施設共同無作為比較試験)へ当院も協力しています。この臨床試験では抗うつ剤の正しい使い方を解明することを目的としており、これにより飛躍的にうつ病治療が発展することが期待されています。


これは製薬会社によるものではなく、医師主導で行っている大規模な臨床試験です。またこれまでは主に欧米のデータを元に治療を組み立てていましたが、この調査が成功すれば日本人によるデータから治療法を解明することができ、また日本から世界へメッセージを発信することになります。


SUN☺Dビデオ1-5初回には中井美穂アナウンサーが出演するビデオを使ってご説明しています。


ご協力をお願いする患者様は概ね以下の通りです。
  1. 25~75歳で、うつ病と診断された方
  2. セルトラリンという抗うつ薬による治療を開始された方
  3. 差し迫った自殺の危険のない方


ご協力頂ける方には、うつ病治療をさせて頂きながら、以下の検査をお願いしています。
  1. 心理検査(5分程度・2~4週に1回程度)
  2. 電話面接(5分程度・半年間で4回程度)


患者さま負担軽減謝品として、QUOカードをご用意しています。


サイトCRCと呼ばれるSUN☺D専属のスタッフが、SUN☺D全体についてご説明し、その後も必要に応じて患者さまのご質問にお答えします。また心理検査や電話面接についてもサポートさせて頂いており、すでに協力して下さっている患者様からもご好評を頂いております。


この研究で得られたデータは匿名化されるため、患者様のお名前などが特定されることはありません。またこの臨床試験に協力するか否かで、今後の治療で不利益になることはございませんし、ご自身の意思で自由にいつでも協力を取りやめることができます。


全国で50近く、広島県では7つの心療内科施設がSUN☺Dに協力しています。こころの健康クリニック可部さんのホームページにも詳しく説明してありますので、ご覧ください。


ご参加いただける方や興味のある方は、スタッフまたは院長へご相談ください。
ご協力よろしくお願いいたします。


SUN☺Dポスター「SUN☺Dポスター」(SUN☺D;2010/12/1)

[2012.6.8] 禁煙のすすめ


タバコを吸っている人の8割の方は実はタバコをやめたいと思っているそうです!


ではなぜ体に悪いとわかっているタバコがやめられないのでしょうか???


禁煙がなかなか達成できないのはご本人の意思が弱いからではなく、タバコによってニコチン依存症という病気にかかってしまっているからです。タバコに含まれるニコチンの依存性は、1位のヘロイン、2位のコカインについで第3位で、5位の覚せい剤や6位のマリファナよりも依存性が高いことがわかっています。覚せい剤がなかなかやめられない芸能人の方をニュースで拝見するたびにドラッグ(麻薬)の恐ろしさを実感しますが、実はタバコは覚せい剤よりやめることが困難な立派なドラッグ(麻薬)なのです。


イギリスでは1960年代から、アメリカでも1970年代から国策として禁煙に取り組みました。その結果、喫煙率は60%から10%程度に低下しています。国際社会では受動喫煙防止のため飲食店の全席禁煙は常識となっていますが、屋外でも公共の施設では禁煙とされてきています。タバコを吸う方が海外旅行をされると喫煙場所を探すのに一苦労されますし、喫煙されない方にとっては、受動喫煙の機会が少ない海外はこんなにも空気がきれいなんだ、と実感されると思います。


一方、日本ではまだまだタバコの害や依存性について知られておらず、男性の喫煙率も依然として30%を超えています。レストランでいくら禁煙席に座っても喫煙席からのタバコの煙が流れてきたり、小学生が通学している横を平気で歩きたばこをしている人を見かけるなど、海外では考えられない状況が続いています。シンガポールでは路上での喫煙は立派な犯罪ですので、歩きたばこなんてしていたらすぐに逮捕されてしまうのはご存知の方も多いと思います。


自力で禁煙を試みた場合5%程度の方しか成功しないとのデータがありますが、チャンピックスニコチンパッチなどの禁煙補助薬を使用する禁煙外来で禁煙すると3カ月後で80%、1年後でも60%が禁煙を達成できます。


禁煙を達成された方々は皆一様に「こんなに楽に禁煙できると思わなかった」「もっと早く禁煙外来を受診すればよかった」とおっしゃいます。また「禁煙するといいことばかりですね!」とのお声もよく聞きます。どんないいことがあるのかが描かれたポスターをこのたびノバルティスさんから頂きましたのでこちらからご覧になってください。


なぜタバコに4000種類以上の化学物質が混ぜてあるのか? なぜ日本には海外のタバコが多いのか? なぜタバコを吸っても咳がでないのか? COPDってどんな病気なのか? などなど禁煙外来ではタバコに関する正しい知識を効率よくお伝えし、賢く禁煙して健康になって頂けるよう、出来る限りのお手伝い致します。


実はタバコをやめたいんだけどやめられない、どうせやめられないと諦めている、禁煙に失敗するのが嫌だ、などお困りの方は是非最寄りの禁煙外来、または当院へご相談ください。


ニコチン依存症を治療して禁煙を達成されましたら、次はご家族や同僚など周囲の方へも禁煙の輪を広げていってください!


ノバルティス生活編
「禁煙のごほうび 生活変化編・体調変化編」(ノバルティス;2012/6/6)
[2012.5.6] i認知療法アプリ


i認知療法というアプリを見つけました! 実はある患者さまから教えて頂いたのですが、鳥取市にあるかたやまこころの健康クリニックの片山郁子先生という方が監修されたそうです。私も早速試してみましたが、認知療法の7つのカラム法を入力でき、保存もできます。保存された結果を見ると、最初に浮かんだ感情と施行後に感じた感情の変化をグラフで見ることもでき、大変よいものだと感じましたので、皆さまにも紹介させて頂こうと思いました。しかも無料! なかなかノートに付けるのが面倒で、、、と思いなかなか実行できておられない方で、もしスマートフォンをお持ちでしたらこのアプリを活用してみられてはいかがでしょうか。Android用のアプリはまだ出ていないようですが、よいアプリなのでそのうち登場してくると期待してます。


①状況:題材を選ぶのが難しいとおっしゃる患者さまがおられますが、日常生活の中でのちょっとした軽い出来事を取り上げてください。余り重たい題材にしてしまうと辛くなって長続きしません。


②気分:憂うつ、不安、怒り、悲しい、いらだち、失望など9~10種類の感情について、これまでにもっとも強く感じた程度を100として、0~100の間で付けてみて下さい。


③自動思考:これがいわゆる自分の性格、考え方のくせにあたります。パッと浮かんだ考えを記入してください。


④認知の歪み:過大評価・過小評価、自己関連づけ、感情的決めつけなどここにあげてある8つの中から当てはまるものを選んで下さい。


⑤反証:自動思考について反証してみましょう。


⑥適応的思考:落ち着いた気分の時に、自動思考とは別の現実的な、別の考えはないか探して書いてみましょう。


⑦気分の変化:適応的思考をした後に感じる今の気分を評価してみてください。②で浮かんだ気分と比べて変化がありますか?


ただし、このアプリは認知療法の7つのカラム法を便利に記録できるものですが、あくまでも認知療法の一部分にすぎません。[2012.3.19] 認知行動療法のすすめでご紹介致しました、「こころが晴れるノート」(大野裕著・創元社)などの清書できっちりと勉強した上で使用されることをお勧めします。ご質問などございましたら、ご遠慮なく診察時にお尋ねください。


勿論、これまで通りノートに付けて頂くのも大歓迎です。いずれの方も、次回の診察時に日頃の成果を見せて頂けるのを楽しみにしています。


i認知療法グラフi認知療法アプリ(更新: 2010/11/09、バージョン: 1.0.1、サイズ : 3.5 MB、販売業者 : Seiji Katayama、© 2010 Seiji Katayama、開発: ShoeKeeper;2008/11/18)
[2012.3.19] 認知行動療法のすすめ


「こころが晴れるノート」(大野裕著・創元社)を購入し待ち合い読書コーナーへ置かせて頂きました。国立精神・神経センター認知行動療法センター長、日本認知療法学会理事長の大野裕先生がわかりやすく書かれた大変よみやすい本です。テレビなどにもよく出演しておられ、ご存知の方も多いと思います。当院でも通院患者さまの中で認知行動療法が必要な方にはお勧めしていた本なのですが、待ち合いでも気軽に読んで頂き、認知行動療法を気軽に感じて頂ければと思います。


うつ病になると、後ろ向きな考えばかりで他の考えが浮かばなくなり、うつ状態から抜け出せなくなってしまう傾向が見られます。うつ状態が少し改善した時期に認知行動療法を取り入れて考えの幅を広げておくと、うつ病の再発率が低下することがある研究ですでに明らかにされています。うつ病に限らず、なんとなく前向きな考え方が苦手な方、職場や家族からのストレスでなんとなく元気になれない方、などもこの認知行動療法を学ぶことによって、自動思考と呼ばれる自分の認知のパターンを修正し、楽に日常生活や社会生活を送れるようになります。


当院では最終的にはお薬を中止して頂くよう計画をたてて治療していきますが、再発を防止する方法のひとつとしてこの認知行動療法を取り入れています。ご興味のある方は、ご遠慮なくスタッフ、医師へご相談ください。


こころが晴れるノート「こころが晴れるノート」より(創元社;2003/3/20)
[2012.3.09] 「わが家の母はビョーキです」を購入しました。


漫画家中村ゆきさんが、統合失調症についてわかりやすく描いた力作です。幼少期にご自身の母親が統合失調症を発症された頃の様子や、お薬による治療の難しさと大切さ、デイケア等の社会資源の活用法など、実体験に基づいて描かれています。


統合失調症を患っておられる方にとっても、また介護されているご家族にとっても一度読まれると良いと思い、当院待ち合いにも置かせて頂いています。来院された際に是非読んでみてください。続編もありますので、順次購入していく予定です。


わが家の母はビョーキですアマゾンわが家の母はビョーキです
「わが家の母はビョーキです」より(サンマーク出版;2008/11/18)
[2012.1.27] 院長講演スライド


統合失調症は100人に1人が発症する、決して珍しくない精神疾患の一つですが、幻聴や被害妄想などの症状がひどくなると入院治療が必要となることもあります。近年の治療技術の進歩により早期発見・早期治療を行えば家庭生活・社会生活に支障なく回復される方が大変多くなってきました。


1月25日佐伯区役所にて「最新の治療方法・精神医療の未来~統合失調症について~」と題して院長が講演を行いました。講演に使用したスライドを抜粋したものを掲載致しましたので、こちらからご覧ください。


今、世界中で統合失調症の遺伝子や蛋白質の研究が進められており、新しい診断方法が開発されつつあることや、統合失調症を発症する前からケアしていく取り組みが進んでいることなども紹介しています。


統合失調症でお悩みの患者さまも、また懸命にサポートしておられるご家族の皆様も、決して諦めず、希望を持って病気と付き合っていきましょう。ご質問、ご意見などございましたら、お気軽に当院受付までお尋ねください。
[2011.12.30] 老年期うつ病


うつ病は早期に休養やお薬による治療を開始するとよくなることの多い疾患ですが、治療開始が遅れたり重症化したケースではなかなか改善しないこともあり、特に体力や抵抗力の低いご高齢の方では食事が取れなくなり生命の危険にかかわることもあります。


そのようなケースでは電気けいれん療法という治療を選択する場合があり、最近ではコンピュータで制御された機械を使って、精神科医、麻酔科医、看護師など多人数で治療するため安全性も非常に高く、治らなかった重症のうつ病の方が劇的に改善するケースをよく経験します。


院長が前任地の吉田総合病院で経験した80歳代の2例の重症うつ病の方について、9月に韓国で開催されたアジア精神薬理学会で同院副部長の冨田洋平先生に発表して頂きました。その時のポスターを当院ホームページの業績についてのサイトに掲載致しましたのでご興味のある方はご覧ください(医学会発表の上から2番目です)。経過図を見て頂くと電気けいれん療法によって劇的にうつ病が改善したことがご理解頂けると思います。


電気けいれん療法は入院して行う治療なのでクリニックでは行えない治療ですが、院長の経験をもとに電気けいれん療法が必要と判断した方には十分ご説明し同意して頂いた上で、責任を持って治療可能な総合病院をご紹介しています。


長年治療しているけどなかなかうつ病が治らない、あるいは最近うつ病が重くなって妄想的な発言が目立つようになった、副作用のためお薬による治療に限界がある、などご心配な方は遠慮なく当院へご相談ください。


それでは皆様、良いお年をお迎えください。
[2011.10.11] 院長論文掲載


アルツハイマー型認知症が進行すると、「泥棒が入った」などの物盗られ妄想が浮かんだり、いないはずの人が見えたり、怒りっぽく興奮しやすくなったりする、などの周辺症状と呼ばれる症状が見られることがあり、ご本人にとっては勿論ですが、介護されるご家族にとっても大きな問題となることがあります。


今月のThe American Journal of Geriatric Psychiatryという医学雑誌に、私たちのグループが執筆した「抑肝散という漢方薬は認知症透析患者の周辺症状を改善させ、かつ副作用もほとんどなかった」という内容の論文が掲載されました。一人でも多くの患者さまがよくなって頂けるよう、世界的な雑誌に発表しました。


これからも、このようなエビデンスを積み重ね、治療に生かしてまいりたいと思っております。当院ホームページ業績についてのページにも記載しております(学術論文の上から2番目です)。ご不明な点などございましたら、遠慮なく受付にてお尋ねください。
[2011.8.22] 新しい抗うつ薬


うつ病に対する新しい治療薬として、8月22日よりレクサプロ(一般名:エスシタロプラム)が日本でも使用できるようになり、同日より当クリニックでも処方できるようになりました。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)としては日本で4種類目です。


2001年以来、すでに世界90ヵ国以上で使用され、その効果は高く評価されています。海外でのデータを見ると、従来のSSRIであるパキシル、デプロメール、ルボックス、ジェイゾロフトと比べて効果、副作用ともに違いがありますので、従来のSSRIで完治に至らなかった方や、これから治療を始められる方に検討させて頂きたいと思います。ご希望の方がおられましたら、遠慮なくご相談ください。


一方、当クリニックではお薬の治療に頼りすぎることがないよう、患者様の症状に合わせて様々な精神療法を取り入れたり、当院PSW(精神保健福祉士)や精神科経験の豊富な看護師らと共に相談業務や環境調整にも積極的に取り組んでいます。お悩みの方はお気軽に相談にいらしてください。
[2011.7.29] 新しい認知症治療薬


アルツハイマー型認知症の新しい治療薬、リバスチグミン経皮吸収型製剤(イクセロンパッチリバスタッチ)が7月19日より当院でも処方できるようになりました。


アリセプトレミニールメマリーなど、すでに処方している認知症治療薬と共に、患者様の症状に合わせて調整させて頂こうと思っていますので、お気軽にご相談ください。(これらの治療薬は認知症の進行を遅らせるお薬です)


また、お薬による治療に限らず、認知症でお困りの患者様、ご家族の方もお気軽にご相談ください。

※本ページに掲載しているPDF資料の無断複製は禁じます。

クエスチョンカード
ページの先頭へ

ホームクリニックについて業績について症状・治療について診療のご案内・アクセスインターネットご予約プライバシーポリシーサイトマップ