法改正の概要:このたびの法改正では「法令順遵守」→「自律的な管理」が中心となりました。化学物質管理の変遷として、20世紀初頭は比較的旧姓で重篤な中毒作業の対策や保証→20世紀中期からは癌などの慢性的な疾病が問題となり→20世紀末からは予防的対策→21世紀からは自律的な取り組みが主流となっています。危険有害性情報は従来通りSDS(Safety Data Sheet)が基本です。厚労省のホームページでもポスターで啓発しています。
徐々に明らかになってきた健康問題と、本邦の特異性:コロナ禍での在宅勤務における健康問題として、世界的には2022年2月WHO/ILOがHealthy and Safe Teleworkを発表し、身体的健康として在宅のレイアウトや長時間労働に伴う悪影響が指摘され、精神的健康として社会的孤立が悪影響を及ぼしているが、逆にうつになるリスクが減ったとする研究もあり、健康行動としては、飲酒、喫煙、肥満が減るとされました。本邦においては厚労省行政推進調査事業費補助金分担研究報告書によると、身体的健康として腰痛、肩こりなどほぼ一貫して筋骨格系の愁訴が増え、健康行動では運動不足、肥満が増え、アルコール消費量、タバコ使用量も増えるとの結果であり、本邦と西洋の様々な違いがあることがわかりました。産業医科大が行っているCoRoNaWorkプロジェクト、大阪国際がんセンターが行っているJACSIS Study、東京大学医学系保健学分野が行っているE-Coco-Jなどの縦断研究が進行中です。在宅勤務の環境の目安として、仕事に集中できる場所か部屋があるか、机は十分に明るいか、机は十分に広いか、足元が広く足が延ばせるか、温度湿度は快適か、で3つ以上Yesがあれば良好な環境と言えます。
① 高ストレス者への全般的(原則的)対応として、現状では高ストレス者の1割程度しかない面接指導の申出割合を上げるため、高ストレス者性格チェックシートを送付したり、判定表を参考に自身の性格傾向を把握してもらい、対応を取るように促します。
② 高ストレス者に対する面接指導や自主対応(セルフケア)の勧めとして、ストレスチェック実施者から対象者への意向確認・事故対応(セルフケア)のための資料の提供・産業保健スタッフ(看護師、カウンセラーなど)による相談対応・就業上の配慮に関する面接指導などがあります。認知行動療法研修開発センターeラーニング、UTSAMeD-うつめど、こころの耳などではインターネットで認知行動療法を体験したり、ストレス対処法について自習できたりする情報が掲載されており、自主学習を促すツールとして紹介します。
③ 高ストレス者に対する面接指導と事後措置として、以下に示す面接の流れステップ①~⑨に沿って行っていきますが、全般的な留意点として、精神的、こころ、うつといった用語には抵抗をもつ対象者が多いため基本的に使用せず、体調、負担、ストレスといった一般的な用語を用いること、アクティブリスニングの技法でもある対象者の言葉を繰り返すことによりラポールを形成すること、少し前傾姿勢で傾聴、共感していることを対象者へ伝えること、できるだけニュートラルな表現で対象者が自分の思うことを回答できるオープンクエスチョンで質問をすること、対象者の決定を尊重し、産業医の責任を果たすために受診勧奨自体は行い記録しておくことなどです。
一人の命を救うのに必要な健診者数を示す、NNR(number needed to recall)では、大腸がん患者一人を救うのに便潜血検査だと300-500人、大腸内視鏡検査だと300人必要とのデータから、大腸がんの検診は便潜血で十分との結論になります。従業員全員がきっちりと健診を受け、健康についてしっかりと教育していくことが重要とのことでした。
REM睡眠を発見したスタンフォード大学のDr.William Dementが1993年Wake up Americaと題した報告書に、「生産性の低下、産業事故の増加など睡眠障害による経済損失は年額5兆円に上る」と試算しており、日本でも内山誠先生が医療費を含まず3兆4693億円の経済損失があると報告しており、欠勤や休職、遅刻早退は4割にとどまり、アルコール摂取、運動習慣の減少、睡眠休養不足により出勤しているにも関わらず十分にパフォーマンスが上がらない状態、すなわちpresenteeismによる生産性損失が6割以上であるそうです。
①有害物・有害業務の除去・代替として暴露をできるだけ小さくすることが必要で、事業者が特定の化学物質を含んだ製品を他の事業者に出荷する際にSDS(Safety Data sheet;安全データシート)を添付しなければならず、安全衛生情報を記載し、事故や中毒に対応できるようにします。また国際連合が中心となって開発したGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)により、世界的に統一されたルールに従って、化学品を危険有害性の種類と程度により分類し、一目でわかるようラベルで表示したり提供したりするようになり、ピクトグラムなどが用いられます。